ブックビルディング方式とはIPOにおける公募価格を決める方法です。その他の方法に入札方式があります。この記事ではブックビルディング方式の特徴や流れ、当選確率を上げるコツを解説していきます。
目次
ブックビルディングとは
ブックビルディング「需要積み上げ方式」とも呼ばれ、IPOを行う企業の株価を決定するための方式の1つです。ブックビルディング以外の方法に「入札方式」があります。
詳しい流れは後ほど解説しますが、ブックビルディング方式ではIPOの需要を確認してから販売を行うため、買い手と売り手のバランスが取れた公募価格をつけることができます。
入札方式
入札方式は「一般競争入札方式」と呼ばれ、投資家が入札した価格によって公募価格を決定する方式です。
入札した価格がそのまま株価として反映されるため、株価の高騰や上場後の急落を招くことがあります。上場する企業にとってはより多くの資金が調達できるメリットがあります。
現在ではIPOにおいてはブックビルディング方式が主流になっているようです。
慶應義塾大学出版会によって2015年に発表された『ブックビルディング方式は本当に優れているのか?:IPOの価格決定方式に関する比較再検討』によれば日本でブックビルディング方式が採用された1997年秋以降、入札方式が選択されたことはありません。
ブックビルディングの流れ
ブックビルディング方式のIPOは以下の流れで行われます。
- 仮条件の決定
- IPOの参加申し込み(ブックビルディング)
- 公募価格の決定
- 抽選の結果発表
企業や主幹事証券による上場の手続きが証券取引所の基準をクリアすることで上場が決定します。その後、機関投資家や証券会社の話し合いによって公募の仮条件が決められ、その価格が個人投資家に発表されます。
個人投資家は提示された仮条件の範囲からIPOへの参加申し込みが可能です。申し込み状況をもとに公募価格が決められますが、この時公募価格以下の申し込みは抽選から外れるためIPOでは仮条件の上限で申し込むのが一般的です。
ブックビルディングとストライクプライス
ブックビルディング方式の申し込みでは仮条件の範囲から金額を選択するのとは別に「ストライクプライス」という方法があります。
ストライクプライスとは「何円でもそのIPOを買います」という投資家の意思表示です。具体的にはブックビルディング期間中に仮条件が引き上げられた時に効果を発揮します。
例えば仮条件が1,000〜1,500円のIPOにAさんは上限の1,500円、Bさんはストライクプライスで申し込むとします。しかしブックビルディング期間中に仮条件が1,300〜1,800円に引き上げられると、Aさんはそのまま1,500円の申し込みです。一方でBさんは自動的に上限の1,800円の申し込みに変更されます。
基本的にIPOは仮条件の上限で申し込みをしなければ当選はしません。またブックビルディング中に仮条件の引き上げがあったとしても、申し込みの変更手続きを行えばいいだけです。ストライクプライスは上限の価格でなければ当選が厳しいIPOで手間を減らせる仕組みと言えます。
アクセラレーテッド・ブックビルディング
ブックビルディング方式の1つに「アクセラレーテッド・ブックビルディング」があります。「accelerated(加速された)」という意味をがあり、即日から数日といった通常のブックビルディング方式に比べてより短期間で公募価格の決定などが行われるのが特徴です。
アクセラレーテッド・ブックビルディングの仕組みはあらかじめIPO情報が未公表の段階で投資家への需要の調査を行っており、IPOの情報が公開されると同時に手続きを開始することで短期間でブックビルディングを行います。
ブックビルディングで当選するコツ
IPOは短期的に高確率で大きな利益を狙えるため、大くの投資家から人気があります。そのため資金力の少ない個人投資家やIPO初心者がやみくもに参加しても当選は難しいと言えるでしょう。
そこでブックビルディング方式のIPOで当選確率を上げるコツを紹介します。そのコツとは下記の2つです。
- 仮条件の上限で申し込む
- 主幹事証券を調べる
仮条件の上限で申し込む
すでに述べたようにIPOは供給に対して需要が大きいため、基本的に仮条件の上限でなければ当選はしません。「この価格以上は出せない」という考えもあるかもしれませんが、それでは当選は難しいと言えるでしょう。
ブックビルディングには仮条件の引き上げがあった場合でも自動的に上限を追従してくれるストライクプライスを利用するのがおすすめです。
主幹事証券を調べる
IPOの株式の割り当ては証券会社によって異なります。証券会社のなかでも主幹事証券は特に多く割り当てがあるため、主幹事証券を利用することでIPOの当選確率を上げられます。
実際、LINEが上場した時は主幹事である野村証券に61.5%が割り当てられ、その次が三菱UFJモルガン・スタンレー証券の16.0%です。
主幹事証券が割り当てにおいていかに優遇されているかがわかると思います。
ブックビルディング方式は株価のバランスが取れる
ブックビルディング方式とはIPOにおける公募価格を決定する方法の1つであり、投資家の需要をチェックすることで需要と供給のバランスが取れた株価を決定できます。
その他の公募価格を決める方法に入札方式がありますが、ブックビルディング方式が導入されてからは使われていません。
ブックビルディング方式でIPOに参加する際は下記の2つのコツを実践することで当選の確率を上げることができます。
- 仮条件の上限で申し込む
- 主幹事証券を調べる
コメントを残す